【こども基地arika】挫折を越えた先にあったもの。人々に学びと出会いを届ける、ぬくもりの”arika”
皆さんこんにちは、goomee編集部です。
今回は兵庫県尼崎市で児童ホームを運営されている若松和子さんにお話をお伺いしました。2022年12月兵庫県尼崎市武庫之荘にオープンしたこども基地arika。児童ホーム(学童)は一般的に、放課後や長期休みなどで保護者が日中家庭にいない場合などで利用ができますが、こども基地arikaではそれ以外のご家庭の方も利用することができるよう利用対象を広げて運営されているとのこと。利用者や子どもの学びに寄り添った運営の裏には一体どんな想いがあったのでしょうか。
こども基地arikaの代表 若松 和子さんは、ご自身の子育ての経験やボランティア、コミュニティ活動、民間学童での勤務経験を通じて、子どもとの関わりについて様々なことを学ばれたとのこと。 「子どもも一人の人間として尊重することで、もともと持っている力がぐんと育つ」というお考えのもと、子どもの自己肯定感を上げることを意識して日々、子どもたちと向き合われている。 HP:https://arikakodomokichi.wixsite.com/arika |
―早速ですがこども基地arikaについて教えていただけますか?
平日の日中や土日はコミュニティスペース、平日の夕方や夏休みなどは児童ホーム(学童)とふたつの顔をもっています。arikaの名前には、大切なものの「在り処」という意味をこめました。
―素敵なネーミングですね!arikaを始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
私がarikaをつくろうと思ったのは、「子どもも大人も、人ってこんなにもプラスに変われるんだ。」と感じたことがきっかけです。
私は過去に自分自身でいることに難しさを感じたり、子育てについてもとても反省した時期がありました。普段生活をしていると他人の目が気になったり、「普通は~」とか「~せねば・~すべき」というようなことを気にするが余り「本当は自分が何をしたいのか」とか「自分がどう感じているか」さえもわからなくなってしまうことがあると思います。周りの人や自分に対しても不安や猜疑心に苛まれてしまうような状況ですね。
かくいう私もそんな状況にあったのですが、PTAやコミュニティ活動を通じて自分と向き合う中で「自己肯定感が上がれば、その人が持てる力を最大限に発揮できる」ということを体感しました。自分自身を過少評価したり疑ったりしていた人がその感覚を手放していくうちに、本来備えている力がおのずと発揮されるようになるんです。
そして自己肯定感を上げる…すなわち自分を大切にできるようになるには、他人から尊重・承認されることが重要だと感じました。周りの人から「ありのままのあなたでいい」「あなたがいるから私は嬉しい」というようなメッセージを子どもたちに送ることが大事だと思っています。
―若松さんが子どもを対象に活動をスタートした理由などはあるのでしょうか?
自己肯定感によって人が変わるという部分で、子どもはその最たる存在だと感じたことが理由です。
PTAやコミュニティ活動などをしていた時にそれを実感したのですが、周りの人や「普通」と比べることなく、子どもたちの選択を待って見守ることで大人が子どもを信じているということを伝えることができます。
たとえば正解や近道を先に差し出すことなく、失敗しようが遠回りしようが、他人と違っていようが、子どもたちの選択や行動を待って見守ることで「この先必ずうまくいくのだ」とこども自身が自分の選択を信じて進むことができるようになるんです。
そんな子どもが一人でも増えるようにと、児童ホームをメインの事業にしました。
―そんな思いがあったんですね!そんなarikaさんなんですが、具体的な方針のようなものはあるのでしょうか?
スタッフが安全管理できるなどの範囲であればのびのびと自由に過ごしてもらうようにしています。
例えばみんなで「今日やりたい遊び」などを話し合って1日の過ごし方を決めたり、なかなかやりたい遊びが出てこなければスタッフが提案したりもしますが、基本的には「見て聞いて感じる」「調べて考える」「やってみる、やり直す」「みんなと」を大切にしています。
最近の子どもたちは子ども同士で過ごす時間が減ってしまったり、大人の愛情の裏返しからか「まずレールを敷かれること」が増えてしまったのではないかと思います。
大人から画一的で目に見えやすい成果を出すことを求められてしまうと、子どもに自由がなくなってしまい、子どもらしさやその子が本来持つ力を発揮しにくくなるのではないかと考えました。
arikaでは他人や普通と比べることなく、強制や禁止もせず大人からの指示がない空間で、子ども同士で過ごす時間を大切にしています。そうすることで苦手な事にチャレンジしたり、自分の気持ちを表現できるようになったり、友達と折り合いをつけるようになったりする姿を何度も目にするようになりました。
個性や環境、性格が様々な子どもたちが一緒に過ごすことで「互いに」いい影響を与え合っていると感じます。
―子どもたちがのびのび学べる環境をサポートされているんですね!他にも特色があれば教えていただきたいです!
特色は大きく3つあるのですが、1つ目が「子どもを一人の人間として尊重する関わりをすること」です。
2つ目は利用対象の幅広さですね。
一般的に児童ホーム(学童)は、放課後や長期休みに家庭での保育が難しいご家庭のみ利用できますが、arikaではそれ以外のご家庭の方も利用可能としました。全国的には学童を利用できるのは5人に1人と言われています。
arikaは当初ランニングコストの助成を受けるべくその方向で事業を始める予定でしたが、申請予定の助成金の相談をしようと役所に問い合わせたところ、尼崎市内はほとんどの校区で待機児童がいないため新規開設しても助成対象とならないとのことでした。
それを聞き確かにショックではありましたが、むしろ放課後に親と過ごす子どもほど、子ども同士で過ごす時間が必要なのではないかという考えに至りました。
コロナ禍も相まって習い事でスケジュールが合わないなどの理由なのか、事業開始前に実施したアンケート結果で、「子ども同士で遊ぶ時間が減っている」と感じた方は72%超でした(有効回答数55名)。
どのみち助成金を受けることが叶わないならば、放課後に親と過ごせる子どもにも利用してもらおう。という気持ちで利用可能な対象を広げてスタートしました。
3つ目は、コミュニティスペースを時間帯で使い分けたり委託販売も行っていることです。
「収益化のための策かな?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、隙間時間にも売上を立てるということだけではありません。
arikaのコンセプトに共感してくださっているスペース利用者様やここに携わってくださる方々は、子どもたちに直接的あるいは間接的に良い関わりをしてくださいます。
お客様の多い児童ホームでは、委託販売の餃子屋さんが納品に訪れたり、スペースご利用の講師の方が子どもたちにいろんなお話をしてくださいます。
「私は小学生の時、勉強机の一番上の引出しに何も入れなかったの。ドラえもんが通れなくなったら困るって思って!」という話や「うちの子も学校行ってないけど、平気平気!」と話しかけてくれたり、老人会の世話役をされている方が「今日の会議で余ったんだけど、よかったら」とペットボトルのお茶を差し入れしに来てくれたり…
いろんな立場の方が子どもたちに寄り添って関わってくださる場面をたくさん見させていただいています。そういった様々な人との関わりが多いこともarikaの魅力だと思います。
―子どもたちの学びや成長に寄り添う素敵な空間ですね…!最後に若松さんから意気込みがあればお聞かせください!
同年代の子どもたちだけでなく、親や学校の先生以外の多様な大人や機会との出会いは子どもたちにとって大きな財産になりえます。
arikaは子どもの学びに寄り添った事業を運営しています。なんでも“arika“を今後もどうぞご期待ください!
◆編集の声◆
私は今2人子どもがいるんですけど、利用対象の幅広さというのは本当に助かると思います。保育園でもそうなんですが、子どもの預け先ってなかなか見つからないんですよね…
最近だと共働き家庭が普通だと思うんですけど、子どもの預け先がないと働きに出れないですよね…その点arikaさんは利用対象を特に設けず運営されているので、そういう悩みが解決しますよね!
さらにいうと若松さんの想いにすごく共感する部分があって、子どもの自己肯定感を大切にしてくれるという部分がとても魅力的だと思いました。例えばやっとの思いで子どもの預け先を見つけても、なんとなく子どもに窮屈な思いをさせてしまうんじゃないかな…?と思ったときに、私だったら多少経済的に厳しくなっても「子どもを預けない」という選択をすると思います。
若松さん自身の経験から子どもの自己肯定感や学びを大切に考えられているということが伝わるので、親としては安心して預けられますよね。
子どもを安心して預けられるというのは大事ですよね。arikaさんのような児童ホームが増えれば、親子両面でのWell-beingが実現するので、まさに「サステナビリティをつくる児童ホーム」だなと思いました。
関わる様々な人が、arikaさんのコンテンツとなっていくのが、素晴らしいモデルだと思います。 地域が家、地域のみなさんが家族、arikaさんがリビング、リビングに様々な人が集まって、くつろいだり、学んだり。。。おもしろいです。 完全な「地域の人間関係持続化事業」ですね。「学び」が軸になっているところが最高だと思います。